「FIT法」という言葉をご存じでしょうか? 「FIT法」とは、簡単に言うと、再生可能エネルギー導入促進を目的として、導入者が安定して売電できるよう、電力会社に国が定める価格で一定期間その電気を買い取るよう義務付けた制度のこと。太陽光発電システムの導入を考える上では、知っておきたい知識のひとつです。ここでは、「FIT法」が定める「固定価格買取制度」と売電価格の関係性を紐ときながら、最適な太陽光発電システムの導入タイミングと運用方法についてご紹介していきます。
トピックス一覧
固定価格買取制度とは
固定価格買取制度とは、太陽光などの再生可能エネルギーを利用して発電した電気を、電力事業者が政府の定めた価格で買い取るよう義務づけたもので、2012年7月より実施されています。電気事業者だけでなく、自宅で発電し売電している方にも適用されるため、太陽光発電システム導入済みの方はもちろん、現在導入を検討されている方も詳しく理解しておくと安心です。ちなみに、価格は期間ごとに定められていて、2024年度(令和6年度)までの価格は下表のようになっています。
2024年度までの太陽光発電の価格表(調達価格1kWh当たり)
10kW未満 | 10kW未満 ダブル発電 | |||
---|---|---|---|---|
出力制御対応機器設置義務 | なし | あり※1 | なし | あり※1 |
2017年度 (参考) |
28円 | 30円 | 25円 | 27円 |
2018年度 | 26円 | 28円 | 25円 | 27円 |
2019年度 | 24円 | 26円 | 24円 | 26円 |
2020年度 | 21円 | |||
2021年度 | 19円 | |||
2022年度 | 17円 | |||
2023年度 | 16円 | |||
2024年度 | 16円 | |||
調達期間 | 10年間 |
※1 北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の供給区域において、出力制御対応機器の設置が義務付けられます。
実はこの制度、電気事業者の再生可能エネルギー分野への参入を後押しする目的もあり、高めの価格設定となっています。価格に上乗せされている部分は「再エネ賦課金」という形で、私たち電気の利用者が実際の利用料にプラスして支払っていることも、頭に入れておきましょう。
再エネ賦課金の算定方法
1.40円/kWh※2 × 1ヶ月の電力使用量(kWh)
※2 2023年5月分から2024年4月分までの金額。金額は毎年変更となります。
再エネ賦課金は、2022年度まで毎年値上がりし、家計を圧迫していましたが、2023年度は2012年度の制度導入以来初めての値下げとなり、平均的な家庭で月800円程負担が軽減されることになります。
値下げの理由は、ウクライナ危機による急激な市場価格の高騰と、再生可能エネルギーによる電気の販売収入が以前より増加することを踏まえたためとしています。
年間の再エネ発電促進賦課金 推移※3
※3 資源エネルギー庁の再エネ賦課金賦課金単価をもとに、家庭での月間標準電気使用量を300kWhと想定して年間の金額を算出
右肩下がりの売電価格
前の章でもお伝えしたとおり、高めの売電価格を設定することで電気事業者をサポートしてきたこの制度。サポートの大部分は、発電設備導入に充てられていましたが、普及により設備価格が年々低下。それに伴い、売電価格も下降の一途をたどっています。
売電価格の推移
()内の文字は出力制御ご対応機器設置義務「あり」の場合の売電価格
10kW以上50kW未満は表示の売電価格に消費税を加算する
「じゃあ、いつ太陽光発電システムを導入するのがいいの?」と疑問をお持ちの方、いらっしゃいますよね。答えは「今」です。設備も安価になっていますし、売電価格が下降傾向にあるとはいえ、まだまだ「上乗せ」部分は健在です。また、固定価格買取制度が終了したとしても、蓄電池を組み込んだシステムにしておけば、効率のよい自家消費で電気料金を抑えることが可能だからです。
●関連記事>>蓄電池選びで大切な6つのスペック、3つのタイプ
まとめ
発電設備の価格低下により、固定価格買取制度の必要性が少しずつ薄れてきた昨今。太陽光発電システムの運用方法も、過渡期を迎えていると言えるでしょう。あくまで予測ではありますが、売電がお得なのはせいぜい来年くらいまで。それ以降は自家消費の方がお得になるのではないでしょうか。これからの太陽光発電システムにおいては、日中貯めた電気を夜間に使える蓄電池の存在が、より大きなものになっていくことは間違いないでしょう。